2008-02-09 [長年日記]

[Days] 雪の日。

 昔「雪がしんしんと降っている」という出だしの詩を習ったなあ、と思ってネットで調べたら出てきました。田中冬二氏の短い詩。

今読むとなんとなく情景が見えてくるから不思議。

没後30年も経ってないから著作権にびくびくしつつ。

雪がしんしんと降っている

町の魚屋に赤い魚青い魚が美しい

町には人通りもすくなく

鶏もなかない 犬も吠えない

暗いので電灯をともしている郵便局に

電信機の音だけがする

雪がしんしんと降っている

雪の日はいつのまにか

どこからともなく暮れる

こんな日 山の獣や鳥たちは

どうしているだろう

あのやさしくて臆病な鹿は

どうしているだろう

鹿はあたたかい春の日ざしと

若草を慕っている

いのししはこんな日の夜には

雪の深い山奥から雪の少い里近くまで

餌をさがしに出て来るかも知れない

お寺の柱に大きな穴をあけた啄木鳥(きつつき)は

どうしているだろう

みんな寒いだろう

すっかり暮れたのに

雪がしんしんと降っている

夕餉(ゆうげ)の仕度(したく)の汁の匂いがする

(田中冬二「雪の日」詩集『春愁』より)